日本の夏、〜かせきさいだぁ〜
最近、肌寒くなってきて、夏の終わりが近づいているなぁ、なんて思いつつ、
ぼちぼち長袖のシャツを取り出してきて、そのシャツがダニと埃にまみれているままの状態で
袖を通すものだからくしゃみとかゆみが止まらなくなるのが毎年恒例のこの時期に、
お値段以上ニトリで購入したCDを入れるのに使用している安っぽい本棚から
このアルバムを引っ張り出してきて聴くのが私にとって毎年恒例になっている。
日本人というのはなぜか夏が好きらしく、先日、田中英司という映画評論家が書いた
「現代・日本・映画」(河出書房新社、2003年)を読んでいたら、コラムで
「日本映画は夏を舞台にしてしまう」なんてあって、「日本には夏の映画が多いけど、
へたくそでもある程度いい映画ができちゃうからそれ選ぶってイージーだよね」
という話が載っていたが、まあ、とにかく私自身、夏が大好きだ。
夏を扱った音楽、映画、本、漫画……それらにはどうしても甘くなってしまう。
かせきさいだぁの「夏」はどこか懐かしい。
「夏休みのオワリのような毎日」がそこにはある。
彼のファンサイトでは、曲のサンプリングソースと歌詞の引用元が公開されているが、これが面白い。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~michico/kaseki/
そこにははっぴいえんど、梶井基次郎、佐野元春、大滝詠一、鈴木茂、
つげ義春、SUGER BABE、宮沢賢治、江戸川乱歩、細野晴臣etc
日本の楽曲、小説、漫画、はたまたコメディアンの登場の台詞までもが並んでいる。
この頃のヒップホップはサンプリングのカルチャーと言っても過言ではないが、
ここまで「日本」を「サンプリング」していたラップ・アーティストも珍しいのだろう。
日本語ラップ初期の世代はいかに日本語でラップをするか、という事にこだわっていた。
例えば、「ラップのことば」(P-Vine Books/2010年)を読んでみると、
日本にラップを根付かせた世代がいかに海外のラップを意識していかがわかる。
スチャダラパーのBOSEはデラソウルやビースティーボーイズを分析した、と言っているし、
ZEBBRAは最初、英語でラップをしていたらしい。
かせきさいだぁはそういった海外のヒップホップの引用、をほとんど感じさせない。
それは楽曲に過剰なまでに引用された日本のカルチャーによるものだ。
若い私が体験したこともないノスタルジィ。
それは古臭く感じさせるし、普段意識をすることもないが、
日本人としての私に刷り込まれた遠い記憶を呼び起こす。
じゃ夏なんで
http://www.youtube.com/watch?v=_dcpKrUk_Jo
さいだぁぶるーす
http://www.youtube.com/watch?v=ydFXjRH3kkM
〜参考文献〜